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【広報取材】ブドウを守り続け半世紀

シャインマスカットの出来栄えを確認する三澤さん

 大野地区でブドウ・キウイフルーツを育てる「みさわ園」で8月下旬、主力のシャインマスカットの出荷が始まりました。同地区は半世紀以上前に市内有数のブドウ生産地に成長。都市化により、わずか数軒のみとなった現在でも相模原の伝統を守り続けています。

 1983年に発行された当JAの創立二十年誌には、戦後の1955年頃に同地区でブドウ栽培が始まり、24人の農家が計6haで栽培を開始。従来は養蚕と畑作の主力でしたが、食料事情が安定してきた時期でもあり、今後の農業経営の方向性を検討して導入したという記録が残っています。その後、同地区のブドウ農家で「大沼ぶどう組合」を結成。同園を営む三澤勝重さん宅では、同組合が当時作った「大沼ぶどう郷にどうぞ」などと書かれたチラシが大切に保管されています。

 三澤さん宅でも他の農家と同様、1970年頃に養蚕からブドウ・ナシ栽培へ本格移行しました。近年ではナシ栽培に幕を下ろし、ブドウとキウイフルーツを手掛けています。ブドウの品種は「デラウェア」「藤稔」「シャインマスカット」の三本柱。三澤さんはブドウの糖度にこだわり、消費者の満足のため、最低でも18度に達しないと販売していないそうです。

 栽培では、剪定作業で発生した枝を粉砕したものを発酵させ、畑の土にすき込ませるなど、有機質を重視した土づくりに注力。自宅の井戸水をたっぷり潅水(かんすい)し、日頃の圃場(ほじょう)巡回を欠かさず行っています。三澤さんは「小まめにブドウを観察して、状況の変化に対応していくことが重要」と強調します。作業には年間を通じて援農ボランティアを積極的に活用し、丁寧な仕事ぶりを頼りにしています。

 近隣には保全林があり、鳥類やハクビシン、カメムシなどの被害が懸念されます。被害軽減に向けた網の設置や適切な農薬散布に注力し、今後は電気柵の設置も検討しています。

 販路は同園での直売と宅配がメインで以前はもぎ取りも行っていましたが、コロナ禍をきっかけに取りやめました。宅配の常連客はキウイフルーツを含めると年500軒ほどにものぼります。ブドウの売れ筋は以前、3~4㎏箱でしたが、近年は核家族化の影響もあり、2㎏箱の需要が高まりつつあります。

  三澤さんは「地区で長年続く歴史を守り、消費者に自信を持って提供できるブドウを育てていきたい」と意気込んでいます。